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■地震動応答解析のおはなし
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第17話 「これからの構造設計」


中沢: 「免震構造が注目されてきたため、振動解析は重要になってきましたね。」
島課長: 「益々、クローズアップされてくるだろうね。」
中沢: 「コンピュータ環境やソフトウェアが充実してきたことが起因しているのでしょうね。」
島課長: 「もちろんそれもあるが、社会の要請として積極的に動き出した感があるね。」
中沢: 「具体的に言うと、どういうことですか?」
島課長: 「まず第一は、総プロ(総合技術開発プロジェクト/建設省※1)の『新建築構造体系』であるが、新しい構造体系についての法令改正を、今から2年後をめどに考えて進めているわけだ。ところが一部の先生からは、それでは遅く、1年後を目処にしたいという意見もでている程だ。」
中沢: 「そんなに急ぐ理由は、なんでしょうか?」
島課長: 「阪神淡路大震災が国民に与えた衝撃度は、予想以上に大きいということだね。そして、第二としては、その大震災以前に建てた免震構造は、10年間で80棟であることは以前に話したよね。ところが大震災以後1年間で80棟の評定申請があったんだ。」
中沢: 「つまり、10倍のペースになったということですね。」
島課長: 「いやいや、現在はそれ以上なんだ。最近ではさらに増えて、月に20件の評定申請※2があるんだ。」
中沢: 「ということは、加速度的に増えているということですか?」
島課長: 「そう言えるかもしれないね。新しい構造技術として最もクローズアップされているのが、免震構造であり、この勢いからすると評定も対応しきれなくなるのは、遠い話では無いと言えるね。」
中沢: 「先程、一部の先生から新構造体系を急ぎたいという話が出たと言っていましたが、この事は予想以上のスピードで世の中全体が動き始めているということですね。」
島課長: 「全くその通りだね。今までの延長線上に新しい構造があるのではなく、今大きく変わろうとしているんだ。構造改革といった方が解り易いかな。」
中沢: 「構造改革と言われてもなにがどうなるかピンときません。新耐震設計法という、世界に誇れる構造体系がありますし、これをさらに充実していけば良いのでは、とも思いますが。」
島課長: 「新耐震設計法は、日本の構造の歴史のなかでも重要で、この過程を踏んだことは大きな意義があったことは事実だね。でも、いつまでも新耐震設計法の新の字を付けていてはいけないということなんだ。」
中沢: 「気象庁が『梅雨は!月!日で明けました』というように、新耐震の新をそろそろ取ってください、と話す訳ですか?」
島課長: 「そういう訳にもいかないが、構造技術者に対して新しい構造技術に向かって、もう走りだしていなければいけないということを伝えたいわけなんだ。」
中沢: 「免震構造についてしっかり理解しなさいということですか?」
島課長: 「勿論それもある。しかし免震構造と言っても免震ゴム(アイソレータ)やその施工技術は日々変化しているし、制振構造もその構造技術の変化は著しい。その変化のなかで、これからは構造体と構造技術者が会話をしていくことになるんだ。」
中沢: 「どういうことですか?」
島課長: 「例えば、新しいダンパーを開発した。制振構造として、そのダンパーを取り付けてみると、30%応答値が削減できるようになった、というように、新しい構造技術を組み込んだ構造体は、どのような変化が生じるか、というように構造技術者が構造体と会話することなんだ。これがまさしく構造設計の本質なんだ。」
中沢: 「新耐震設計法は、このような新しい構造技術に対応できなくなっているわけですね。」
島課長: 「ここ1年間の構造技術の進歩や新しい構法開発は、大変著しいね。このような変化に対応できる規準内容になっていなければならないわけだ。」
中沢: 「世の中の技術進歩にも追随していける規準にするわけですね。」
島課長: 「これからは建物の性能をさらに明確化していこうという考えで、今までの新耐震設計法の考え方である仕様規定から性能規定へ脱皮することを考えているわけだ。」
中沢: 「建物を構造設計するとき、まずこの建物の設計クライテリアを明確に持ちなさいと、島課長は言っていましたね。このようなところから構造設計することを性能規定と言うんですね。」
島課長: 「そう考えてもよいが、別な言い方をすれば、仕様規定とは構造計算をやることで、性能規定とは構造設計をするということなんだ。」
中沢: 「今までは、意匠設計の方から図面を受け取って、その図面に従ってただ構造計算をしていたということに気が付かなければならないわけですね。」
島課長: 「そう、これからは新耐震設計法の本質を理解し、それを超越した責任ある構造設計を目指すわけだ。当然、建物の性能をどうしたいかと言うことで、施主や設計者との会話は必要で、新しい構法を取り入れることになれば、施工までかかわってくるね。」
中沢: 「構造技術者の役割が大きくなるわけですね。」
島課長: 「もちろん、これからの建築において、構造技術者は今までの数倍の役割を演じることになるだろうね。2〜3年後は、コラボレーション(協調設計)の時代と言われているんだ。構造技術者は、意匠・設備・施工の方々とコンピュータによる会話をふまえて構造設計するという重要な役割を担うことになるね。」
中沢: 「将来が見えてきました。まずは、振動解析等の動的なことをさらに深く理解し、構造設計の本質を修得したいと思います。」
(星 睦廣)

※1 この記事は1996年に書かれたものです。現在、建設省は国土交通省となっています。
※2 この記事は1996年に書かれたものです。現在、大臣の認定を受けるために必要な日本建築センターでの事前審査のことは性能評価と呼びます。


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