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■地震動応答解析のおはなし
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第16話 「免震構造と偏心」


中沢: 「免震構造の話になったら、急に難しくなった感じがします。」
島課長: 「どの辺が、そう感じましたか?」
中沢: 「やはり構造設計の自由度が大きくなった分、設計クライテリアをどのように持つかの幅も広がり、まだまだ自信が持てませんね。」
島課長: 「この辺を、明確に言いきれるようになったら一人前だからね。最初はそんなものでしょう。」
中沢: 長!免震構造のメリットとして、上部構造に入る地震力は大変小さくなることは、わかりました。その他の特徴としては、何が挙げられますか。」
島課長: 「設計の自由度が増すことだね。」
中沢: 「設計の自由度が増すということは、自由な設計ができると解釈すると、不整形な建物でも良いということですか?」
島課長: 「その通りだ。もっと明確にいうなら、偏心した建物の設計ができやすいと言うことだね。」
中沢: 「偏心した建物の設計がしやすいとはなぜでしょうか?上部構造に入る地震力が小さいために偏心した建物でもその影響が少ないと言うことでしょうか?」
島課長: 「そのとおりだね。ここで一つ整理しておくことは、上部構造がいかに偏心していても、免震層は、偏心しないように設計するというのが原則なんだ。」
中沢: 「免震層が偏心しないようにできるんですか? 上部構造の偏心率が大きければ、当然それにより、免震層もねじられてしまうのではないですか?」
島課長: 「そうではないね。免震層のみは、ねじれないように設計するんだ。」
中沢: 「でも課長、免震層の偏心率をゼロにしても、上部構造に大きな偏心があればそれに伴って、免震層もねじれるのではないんですか?」
島課長: 「ねじれないね!」
中沢: 「え!ねじれないんですか?」
島課長: 「中沢君、偏心率を求める式はわかっているよね。」
中沢: 「はい・・・。」
島課長: 「この式は各層独立に求まるんだ。従って上層の偏心率の影響は受けることなく、その層の剛性と上部の重心位置から決定してしまうものだね。」
免震層は上層の偏心率の影響は受けない
中沢: 「なるほど、なるほど・・・。」
島課長: 「簡単に言うならば、上部構造の重心と免震層の剛心を一致させることにより免震層はねじれないことになるんだ。 偏心を正確に言うなら、偏心率を計算するときの重心位置とは、その層より上の階に作用する地震力の位置なんだ。」
中沢: 「言葉で聞くと解ったようなきがしますが・・・。」
島課長: 「別な言い方をすると、各階床面の重心位置に作用する地震力を、偏心率を計算する層に投影し、その合力を求めた位置ということだね。」
中沢: 「この位置は、動かないものですか?」
島課長: 「動くね。ひとつの建物でも地震力の分布が変わると、当然先程の重心位置は変化し、偏心率も厳密には違ってくるんだ」
中沢: 「建物が動いているときは、地震力の分布は、かなり変わっていると考えてよいのですね?」
島課長: 「一次モードだけが卓越している場合は、各層の地震力分布は一定と考えられるが、二次モードや高次モードも加わるので、変化はあることになるね。」
中沢: 「ということは、免震層でねじれを防ぐことは、出来づらいということですね?」
島課長: 「いや、その逆だね。免震建物は、免震層が高次モードを取り除くフィルターのような効果を持っていて、上部構造が剛体運動のような挙動となるため、上部構造は一質点モデル(一次モード)と考えることもできるんだ。それゆえ重心位置の変化は少なく、ねじれを防ぎ易いことになるってわけだ。」
中沢: 「なるほど・・・。」
島課長: 「さらに、偏心率の計算には剛心の位置も関係するが、せん断型の層において成り立つ式であるため、その意味からも免震層は偏心を制御し易いといえるわけだ。」
中沢: 「免震層はせん断型変形をするということですか。」
島課長: 「その通りだね。」
中沢: 「なるほど、よく解りました。ここで免震層を偏心させないようにすると、どんなメリットがありますか?」
島課長: 「偏心することにより、積層ゴム(アイソレータ)の変形量が場所により異なってくる。免震構造の設計の基本は、アイソレータの変形を許容限度内に納めることにあるんだ。その為に変形量は大事な要素で、変形量をおさえる意味でも、偏心してはいけないわけだ。」
中沢: 「なるほど、免震建物って奥が深く、建物の動的挙動をよく理解していないといけないんですね。」
(星 睦廣)


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