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■地震動応答解析のおはなし
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第31話 「復元力特性(その3)」


島課長: 「さて、次は層レベルの復元力特性について説明しよう。」
中沢: 「そうですね。部材についての復元力特性と層を代表したときの層レベルでの復元力特性は、当然異なってくるんでしょうね。」
島課長: 「層レベルの場合は、この復元力特性を使いなさい、といった決まった復元力特性はないね。まさしく、部材の復元力特性から考えた応用問題ってとこだね。」
中沢: 「う〜ん?それでは解らないのでもう少し教えてほしいのですが、例えばRC造で純ラーメン構造の場合には、どんな層レベルの剛性で、かつ復元力特性を持つのですか?」
島課長: 「まず層レベルの剛性、すなわちスケルトンカーブ(骨格曲線)については、以前(第27話28話)に話したような方法で第1勾配、第2勾配そして第3勾配を決定するね。また、先日(第30話)話したR.Oモデルを用いるなら曲線で表わされたスケルトンカーブがそのまま使用できるね。」
中沢: 「そうでしたね。これによりスケルトンカーブは決まったとすると、除荷時の剛性や履歴ループをどうするかですね。」
島課長: 「これは建物がどのように壊れるかによって判断することになるね。」
中沢: 「具体的に言うとどうなりますか?」
島課長: 「この純ラーメン構造が梁崩壊型なのか、柱崩壊型なのかによって異なってくるんだ。例えば、梁端の曲げ降状型の場合は、梁部材の曲げ変形の復元力特性と類似形になるので、武田モデルを使うことができるね。しかし、同じRC造の純ラーメンでも、短柱が多くて、短柱で崩壊するような建物は短柱の特性に似てくるので、最大点指向型の復元力特性を使うことができるね。」
中沢: 「なるほど、崩壊の仕方によりその特性を把握するわけですね。それでは復元力の異なる部材の塑性化が混在した場合はどうなりますか?」
島課長: 「工学的判断により、決定するんだろうね。」
中沢: 「複雑な崩壊型の場合、部材の復元力特性も多種に渡るため、どの復元力特性をあてはめるか難しい判断になるが、例えば履歴減衰の大きい方を採用するよりは、小さい方が安全側に働くとの判断をして、復元力特性を選択したりするね。」
島課長: 「なるほど!と思いながらももう少し詳しく教えてほしいので、具体的に述べますと、例えば、耐震壁や柱梁で構成するラーメン部分が混在している場合(図1)にも同じことが言えるのですか?」
図1
中沢: 「そうだね、耐震壁は柱や梁に比べて剛性が高く、水平力の負担も大きい。また、履歴減衰も小さいため、復元力特性は耐震壁の特性である最大点指向型を用いることも考えられるね。」
島課長: 「この建物は、壁だけでなく柱梁で構成されているラーメン部分もあるため、ラーメン部分の特性も考慮しなくて良いのですか?」
中沢: 「この建物は、壁だけでなく柱梁で構成されているラーメン部分もあるため、ラーメン部分の特性も考慮しなくて良いのですか?」
島課長: 「そこが経験からくるところの工学的判断ってとこだね。」
中沢: 「・・・??」
島課長: 「すなわち、この建物の応答において、壁が支配的かどうかってことなんだ。支配的なら先程の考え方でも良いし、支配的でないなら、例えば図1のラーメン部分が多スパンに渡って存在するなら、壁が支配的でなくなってしまうね。」
中沢: 「それです!ラーメン部分の特性も壁部分の特性もどちらも無視できないような建物の場合にどうするかですが?」
島課長: 「その時は分けて考えるね。」
中沢: 「分けるって??」
島課長: 「それはねぇ。まさしく、これから話しをすることは、応用問題で、技術者により判断は異なっても良いわけだから、ひとつの例として聞くほうがいいね。」
中沢: 「はい、わかりました。」
島課長: 「それでは、図1のモデルをそのまま使って説明しよう。図2(イ)のようにラーメン部分と耐震壁部分とに分割し、図2(ロ)の特性の異なる2つのフレームを想定する。そして図2(ハ)のようにそれぞれの剛性評価及び復元力特性を設定して串ダンゴモデルを完成する。」
図2
中沢: 「なるほど!特性の似ているものをあつめて、それを1つのフレームに考え、復元力特性をあてはめる。まさしく応用問題ですね。ところでローラー支持は梁中央ですか?」
島課長: 「反曲点位置だね。この反曲点位置もまわりの剛性が変われば、変化するんだ。例えば、梁や柱、壁がひび割れたりすると反曲点位置も変化するね。この辺をいい加減にやると、精度よく解析しようとした図2のモデル化が適当になり、1つのフレームで考えた場合よりも精度が悪い結果になることもあるので注意が必要だね。」
中沢: 「う−ん!やはり細かいところで悩んでしまいますね。」
島課長: 「まあ、自分が納得するまで、妥協しないモデル化をすることだね。」
中沢: 「島課長!なんとか解りました。しかし、この例はともかく工学的判断が難しいもっと複雑な崩壊をする建物のときは、どのようにモデル化するのでしょうね。」
島課長: 「モデル化がいい加減だと、信頼ある建物はできないね。構造技術者は自分自身が確信のもてる建物を設計しなければならないから、迷ったら原点に戻ることだね。」
中沢: 「原点に戻るとは?」
島課長: 「部材レベルの剛性や復元力特性を用いた立体振動解析をすることだね。迷い、悩んだとき、このような解析をする。この繰り返しの数が、工学的判断に磨きがかかるのではないかね。」
中沢: 「まさしく、その通りですね。ところでこのように1フレームを2フレームへ分割した場合、ソフト上でのフレームの配置は問題ないのですか?」
島課長: 「弾塑性応答解析プログラムのBUILD.DD2000には平面解析のBUILD.DD2000/2Dと擬似立体解析のBUILD.DD2000/2.5Dがあるのは知っているね。」
中沢: 「はい!」
島課長: 「剛床条件はツインタワーのように2剛床でも対応できるね。つぎに、擬似立体解析のBUILD.DD2000/2.5Dの場合にはBUILD.DD2000/2Dと異なり配置する場所が関係するので、図3に示すようにX1通り上にX1ACフレームモデルとX1Bフレームモデルをそれぞれ配置することになるね。」
図3
中沢: 「島課長!擬似立体モデルですが、私なりにイメージすると、図4に示すようになります。」 図4
「ここで、X1通り上に、X1ACフレームとX1Bフレームの串ダンゴモデルを配置する。直交方向のY1フレームも同様に串ダンゴにモデル化する。これを全フレームについて行い、各層を剛床とする。このようなイメージです。」 「」
島課長: 「似ているが、ソフト上の取り扱いは少し違うね。まず、各層ごとに重心位置とその重量を入力する。またフレームごとにスケルトンカーブや復元力特性を指定するので、図5のように表わされるね。」
図5
中沢: 「床面は剛床を意味しますね。またせん断バネで表わしていますが、曲げ剛性もあって良いですね。」
島課長: 「まったくその通りだね。ここで、各フレームの剛性をせん断バネで表わしたのは、フレーム(通り)方向の変形に対して抵抗し、それと直角方向には抵抗しないことを図的に示しやすかったからだ。また、これらの(せん断)バネは、各フレームの各層を代表する層レベルの剛性や復元力特性をもったものであることは言うまでもないね。」
中沢: 「X3フレームは、角度θだけ傾いていますが、これについて、もう少し詳しく教えてください。」
島課長: 「まずX3フレームは、θだけ傾いていることを入力指示する。これによりX3フレームの各層の特性(剛性等)を指定するだけで、θ傾いた方向すなわちX3通り方向の変形量に対してのみそれらが抵抗することになるね。」
中沢: 「擬似立体モデル、良くわかりました。」
(星 睦廣)


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