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■地震動応答解析のおはなし
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第23話 「地盤のモデル化(その2)」


中沢: 「ところで、地盤の固有周期とはどのくらいあるんですか?」
島課長: 「これも一概にはいえないが、新耐震設計法において振動特性係数というのがあるね・・・。」
中沢: 「はい、Rtで表わされるものですね。」
島課長: 「そう、これはまさしく、地盤と建物の相互作用の影響の度合い(図1)を表わしたものなんだ。」
図1
「この図を2つの視点で見ると、まずひとつ目は、1秒より小さい固有周期の部分が地盤の影響を最も強く受けやすいところにあるということ、ふたつ目は、2秒前後のところに地盤の種別により建物応答が大きく異なる領域があるってことだ。」
中沢: 「1秒より小さい範囲において、振動特性係数のRtが大きいということは、地盤の周期と建物周期が近づいたことを示すわけですね。」
島課長: 「そのとおりだね。実記録(強震記録のうちの主要な179成分)により統計的にまとめた図2の応答加速度スペクトル比をみてごらん。」
図2
中沢: 「図2で第4種地盤とありますが、どういう地盤ですか?」
島課長: 「これは第3種地盤のことを指すんだ。」
中沢: 「えっ?どういうことですか。」
島課長: 「新耐震設計法(案)のときは、地盤種別が四段階になっていたんだ。ところが新耐震設計法が施行されたときは、三段階にまとめられ図2の第2種地盤はなくなり、第3種地盤が第2種に、第4種地盤が第3種地盤に変わったんだ。」
中沢: 「そういうことですか。」
島課長: 「この図2より、地盤の卓越周期が、地盤種別ごとに異なっているのがわかるね。これにより地盤周期は、第1種地盤で0.1秒程度、第2種地盤で0.6秒程度、第3種地盤で1.0秒程度ということになるね。また、図2のスペクトルを滑らかにしたのが図1の振動特性係数だね。」
中沢: 「はい、地盤の周期についてはわかってきました。」
島課長: 「もう一つは、建物固有周期が1秒から3秒前後に見られるように、硬質地盤か軟弱地盤かの地盤の種別により応答が2倍ぐらい違うということだ。」
中沢: 「なるほど!」
島課長: 「そこで少しまとめると、地盤を格子モデルやFEMモデルにて解析するときは、第一に地盤周期と建物周期が近づき、共振する恐れがあるときだね。そして、第二に軟弱地盤の上に建つ建物で、建物周期が1秒から3秒近辺になる高層建築物や免震建物のときだ。第三に原子炉建屋のように重要な建物のときだね。」
中沢: 「なるほど!要は、共振するようなときは、しっかりしたモデル化をして対処しなさいということですね。」
島課長: 「そういうことだ。」
中沢: 「地盤のモデル化の使い分けについては、解ってきました。それでは、よく使われるロッキング・スウェイモデルについて、もう少し詳しく教えてください。」
図3
島課長: 「ロッキング・スウェイモデルは、簡便なだけに特性値は大胆な仮定をしなければいけない、ということは以前に話したね。」
中沢: 「はい、聞きました。さて、そのモデル化の件ですが、どのようにして特性値を決めるのでしょうか?」
島課長: 「例えばロッキング・スウェイモデルにおいて、基礎部の質量をどうするか?ということがあるね。すなわち、どの範囲までの地盤の重量を考慮すれば良いのかだ。」
中沢: 「そうですね。どの範囲までですか?」
島課長: 「わからないから、いろいろな質量を想定して計算してみるんだ。」
中沢: 「それでは、解析した数分答えが存在して、困ってしまわないんですか?」
島課長: 「それは、先程も(第22話)述べたように、統計的な視点から、建物の挙動を見なければならないわけだ。すなわち、建物に対する影響の度合いをつかもうとしているんだ。質量を変えても、建物に影響が少ないことがわかるだけでも、ロッキング・スウェイモデルの意味があったというわけだね。」
中沢: 「ある質量のときに、影響が大きく現れたら?」
島課長: 「その時は、もっと調査が必要とのシグナルなので、格子モデルやFEMモデルで地盤の影響を再評価する必要もでてくるね。」
中沢: 「なるほど!その他の特性値として地盤の剛性はどうですか?」
島課長: 「例えば今は、質量をパラメータにして検討したが、その他にロッキングバネやスウェイバネの剛性評価も地盤を適切にモデル化したかどうか、難しいところがあるね。そこで、これらの評価を少し増減して建物への影響を見てみようとなるわけだ。」
中沢: 「剛性をパラメータ的に変化させるわけですね。するとどうなるんですか?」
島課長: 「質量を変えても応答に大きな変化がなければ、バネ剛性を変えても、そう変化はないだろうね。」
中沢: 「どうしてですか?」
島課長: 「地盤の周期はその質量とバネ剛性で決まるから、質量をパラメータとしただけで、地盤の周期をいろいろ検討したことになるからだよ。」
中沢: 「さらにもう一つ、減衰定数の扱いですが、スウェイバネや、ロッキングバネに対する減衰定数も、パラメータで変化させるのですか?」
島課長: 「変化させてもよいが、減衰定数は小さい方が応答が大きく安全側なので、小さすぎない程度の小ささで検討するってとこかな。」
中沢: 「小さすぎない程度って、どのくらいですか?」
島課長: 「数パーセントということになるが、直接基礎か杭基礎かの条件でも異なるね。ここで大事なことは、地盤のモデル化をFEMモデルや格子モデルを採用して、経験をつみ、その傾向を知っておくことなんだ。その上に立ってロッキング・スウェイモデルを使用することが前提だね。」
中沢: 「なんかわかってきました。FEMモデルのような高級なモデルを使わなくても、よく理解して使用すれば、ロッキング・スウェイモデルで地盤との相互作用が把握できるわけですね。」
島課長: 「建物を設計するのに、必ずしも、ロッキング・スウェイモデルでなければならないことはないね。基礎部固定でも良いときがあるね。」
中沢: 「固定と簡単にしていいんですか?」
島課長: 「例えば、超高層建物の場合は、建物が柔らかく、強固な地盤の上に支持されていることもあり、地盤との連成作用の影響が少なく、基礎固定条件で解析する場合も多いね。また、基礎固定にするか、ロッキング・スウェイバネを採用するかでは、固定にしたほうが建物固有周期は短くなる。地震波の卓越周期と考え合わせると、建物周期が短い方が建物に厳しい場合が多いわけだ。すなわち安全側のモデルにもなりえる場合も多いので、設計手段としては、有用なモデル化といえるね。」
中沢: 「なるほど、よくわかりました。」
(星 睦廣)


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