株式会社 構造ソフト

製品情報ダウンロードサポート技術情報会社情報サイトマップ


■地震動応答解析のおはなし
トップページ > 技術情報 > 地震動応答解析のおはなし > 第21話


第21話 「地盤と逸散減衰」


中沢: 「内部減衰と履歴減衰については、よく解ってきました。ところで、もうひとつ減衰に関する種類がありましたね?」
島課長: 「逸散減衰のことだね。」
中沢: 「そう、その逸散減衰とはどんな現象ですか?」
島課長: 「解りやすく言うなら、地下逸散減衰とも言うね。すなわち、建物の振動エネルギーの一部が地下に逃げていくため、建物の振動が減衰される現象だね。」
中沢: 「なんとなく解った気がしますが・・・??例えば、建物の基礎部を固定の条件にして、振動解析した場合は、逸散減衰はないと考えていいわけですね。」
島課長: 「逸散減衰がないと言うより、逸散減衰効果を無視した、と言ったほうがいいね。」
中沢: 「よく地盤をモデル化するときに、スウェイバネやロッキングバネ(図1)を用いますね。当然地盤を固定条件にしたときと、このモデル化を採用したときとでは建物の応答も変わりますが、このことを指しているわけですね。」
図1
島課長: 「それは少し違うね。まず地盤部分は無限に広いものだが、図2のようなFEMモデルや、杭や地盤の変形を考慮して、スウェイバネやロッキングバネにモデル化する。そして同様に減衰定数についても地盤の内部減衰や履歴減衰そして逸散減衰を全て考慮して、スウェイバネの減衰定数及びロッキングバネの減衰定数としてモデル化するわけなんだ。」
図2
中沢: 「地盤の内部減衰や、履歴減衰は容易に理解できるようになりましたが、それとは異なるものとして逸散減衰があるとすると、もうちんぷんかんぷんです。」
島課長: 「逸散減衰はわかりにくいが、すぐあきらめないでくれ!」
中沢: 「どのような現象なのか、もう少しわかりやすくお願いします。」
島課長: 「まず基礎固定で、内部減衰や履歴減衰がない建物を考えた場合、入力波によっては建物が共振し、振幅が無限大(∞)になることがあるのはわかるね。」
中沢: 「はい、わかります。」
島課長: 「そこでこんどは、建物と地盤をモデル化する。このとき地盤は無限の広がりをもつものとしてそれに近いモデルを想定する。また地盤の内部減衰も履歴減衰もゼロとする。このモデルで建物が共振するような入力波を加えたとすると、どうなるか?」
中沢: 「建物が共振するか、しないかと言うことですね。」
島課長: 「そう、建物は基礎固定の条件のときと異なり、共振が減り、無限大の振幅にはならないんだ。」
中沢: 「すなわち、減衰効果が働いたと言うことですか?」
島課長: 「そう、この減衰が逸散減衰なんだ。」
中沢: 「建物も地盤も減衰はゼロとしていたのに、何ゆえ減衰効果が働いたのでしょう?」
島課長: 「それは、地盤を無限に広いものと考えたからなんだ。」
中沢: 「う〜ん?? わかったような、わかっていないような・・・。」
島課長: 「今までは振動論的な説明だが、波動論的な説明で言うと・・・。」
中沢: 「はい、はい・・・。」
島課長: 「地表面の地盤が動くと、建物の一階の地表面に近いところだけが変形する。そしてその変形がさらに上部に移動し、だんだんと上部へ変形が伝わっていくのが想像できるかい。もちろん一瞬の出来事だけど。」
中沢: 「はい!サーカスでライオンをあやつる人が、ムチを持っていますね。そのムチを手元で動かすとムチが波をうってムチの先端に移動していく。あのようなイメージですね。」
島課長: 「そう、そう、それだよ。これを波動論で説明すると、波が1階から最上階に、ある速度をもって伝わっているということなんだ。そして、建物の最上部に達するとその波動は、反射波となって戻ってくるんだ。そしてさらに基礎固定のところでまたまた反射する。」
中沢: 「建物に減衰がないとすると、永久に振動するということですね。」
島課長: 「そう、そして建物と共振する波が次々と加えられると振幅が増幅され無限大となる。」
中沢: 「なるほど。ところで建物と地盤の相互作用を考えるとどうなるんですか?」
島課長: 「基礎固定でないと、波が完全に反射しないで、一部が地盤へ伝わるんだ。ところが地盤に伝わった波は、無限に広がる地盤の中を走って行くため、建物へ戻ってこない。」
中沢: 「なるほど、地盤に消えたエネルギー損失が逸散減衰ってことですね。」
島課長: 「そのとおり。」
中沢: 「良くわかりました。ここで2つほど質問があります。まずは、振動論と波動論はどう違うのですか。」
島課長: 「アプローチする視点が異なるだけで、どちらも同じものだと考えて良いね。特に波動論は均質な物体や成層地盤のように連続的なものにおいては扱いやすいが、建物等では振動論のアプローチが分かり易いってことだと思うよ。」
中沢: 「もう一つは、無限に広がる地盤のモデル化は不可能ですから、その辺はどうするのですか?」
島課長: 「例えば、地盤をFEMモデル(図2)としたときは、境界条件のところにダッシュポット(ダンパー)を付けて、逸散減衰効果をモデル化するんだ。」
中沢: 「ロッキング・スウェイモデルや、FEMモデルの関連等をもう少し説明して下さい。」
(星 睦廣)


[第20話へ] [21話] [第22話へ]

[地震動応答解析のおはなしへ戻る]



トップページへ
トップページへ

Copyright (C) KozoSoft Co.,LTD All rights reserved.